「自分の頭で考えて動く部下」は
上司にとっては理想である。
これまで、私は、部下に恵まれない、と
思っていた。
しかし、あまりにも「指示待ちの部下」が
続き、
もしかしたら、私のやり方が間違えていたのではないか、と思い、本書を手にとる。
筆者が説くには、「自分の頭で考えて動く部下」を育てるには、
「仮説的思考」が必要で、これを部下が身につけるまでには、およそ3年はかかる。
そのくらいのスパンでしっかりと育てなくてはならない。
「自分の頭で考えて動く部下の育て方」 篠原 信
その心は、山本五十六の言葉を借りて、筆者は表している。
「やってみせ 言って聞かせて させてみて ほめてやらねば 人は動かじ」
この言葉には、続きがある。
「話し合い 耳を傾け 承認し 任せてやらねば 人は育たず」
そして、こう続くのだ。
「やっている 姿を感謝で 見守って 信頼せねば 人は実らず」
本書の冒頭でこの話がでてきて、私は、なるほど、と思う。
全編、読了後、私が最も頭に残った部分がある。
それは、上司の一方的な決めつけにより、部下がペルソナを持ったときの対処だ。
心理学でいうところのペルソナであり、
自己防衛のための別の人格を持ち、
他者から自己を防衛するためのペルソナ(仮面)である。
筆者は、このペルソナをつけられたら、その部下との関係を諦めることも視野に入れてよい、という。萎縮型の部下は、「できない」と思うと、さまざまな拒否反応を示す。
これをラポールにより信頼関係を結ぶ必要があると説くが、過剰にする必要はない。
と筆者は語る。グサりと、私に言葉が刺さった。
私の経験では、部下のペルソナはこれまでの育ってきた環境により、身についたものが多い。過度に反抗的になる者、現場で泣く者、思考停止になる者。いわゆる心が壊れる、という状態になる事もある。筆者は、まず部下がペルソナを持たないでいい関係を築くことが先と説く。ペルソナを持ってしまったら、時間をかけて、剥がしていかなくてはならない。しかし、無理する必要もない。これは上司と部下にとって、修復不可能な時は、環境を変えることが解決策になる。
最も、筆者はそれが最良の策ではない、と言う。
「仮説的思考」を育て、行動できる部下を育てるためには、
上司がすることは、萎縮させることでも、モチベーションをあげることでもなく、
常に見守り、感謝を言葉にし、信頼することだ、と説く。
冒頭の言葉に戻る。山本五十六の言葉の最後の文章。
「やっている 姿を感謝で 見守って 信頼せねば 人は実らず」
ここが欠けては、人は実らず、である。
「指示待ちの部下」しかいない、部下が無能で困る。そういう方は一読の価値はある。