東京雑記

‐Tokyo Miscellaneous Notes‐

「徳島阿波踊り」総踊りの経済効果

2018年8月13日。徳島阿波踊りでは、中止された「総踊り」が実施された。

行政に立ち向かう民衆の祭として、拍手喝さいが起きた。

 

徳島市で15日まで開催中の阿波踊りで、主催する実行委員会が中止を決定していた踊り手の催し「総踊り」は、一部の踊り手が13日夜、市内の歩行者天国で披露し、盛況だった。主導したのは、実行委と対立した一部の人気踊りグループ(有名連)でつくる阿波おどり振興協会。実現には、商店街の協力があった。

引用:実行委が中止決めた阿波踊り「総踊り」、決行の舞台裏:朝日新聞デジタル

 

この問題は、徳島新聞と観光協会の対立から、徳島新聞よりの市長が観光協会を破産させ、あらたに阿波踊りビジネスを徳島新聞とはじめたことに端を発している。

4億円の赤字

破産の原因とされた4億円の赤字だが、これはまっとうな理由による赤字だ。台風による中止による払い戻しや、修繕費にかかる費用。そもそも観光協会という団体が営利を目的として、黒字になることを目的とするのだろうか。しかもこれは銀行から借り入れた累積の赤字4億円である。

経済効果は100億を超える

阿波踊りの経済効果は1年間で100億円を超える試算がでている。4億は24年で4億の赤字である。24年間で、単純計算で2400億円の経済効果を生み出している。そもそも税金で賄う費用であり、赤字計上をすることがおかしいのだ。100億円の10%として10億円の税収があり、そのうち10%1億円を阿波踊りにつかうことが非効率なのだろうか。

官民協業と首長

田舎町では、地元の有力企業のトップが首長に立候補し、当選することはいくらでもある。地元の名士になるため、企業が応援し、関係者が応援していくと選挙に勝てる。地方創生のイベントである「阿波踊り」は、観光協会の発案で、徳島新聞というメディアの力を借りて大きく発展してきた。累積赤字は税金で負担されており、それは長く隠されてきたのだ。実態は赤字で、役場が議会を説得して、税金を出しているイベントはいくらでもある。

地域の発展とブランディング

「祭」コンテンツは、近年注目されている無形文化財である。またスポーツツーリズムも新しい形での地域発展とブランディングへ繋がるイベントとして、注目され、マラソン大会、自転車イベントは各地で開催されている。実態は行政は赤字にならない程度の負担を行い、観光協会がリスクをかぶる形である。観光協会は旅館や観光産業の方々から成る団体で、単独の収支よりも、加盟団体に収益があがることが目的である。言いかえると、本業が儲かっていれば、観光協会が赤字でも痛くも痒くもない。行政は税金をリスクある事業に投下できないから、観光協会を隠れ蓑にして、税金を使う。

徳島阿波踊りの実態はわからない。あくまで私が関わってきた地方イベントの作り方である。座組や経緯が酷似していたので、とても気になったのだ。

この税金の使用には、役場と議会の関係がある。チェック機能が働いているという意味では、よいと思う。市長と役場VS議会 この図式が地方のイベントでは、成り立つのである。そして、そのどちらも自身の派閥や近しい団体への利益供与へ向けて活動をするのである。

民衆はどこにいくのか?

民衆の代表の市長と議員が民衆のために動く。これは至極当たり前のことである。田舎町の経済では、これがあからさまな形になる。税収をあげなければ、福祉も整えれない。行政は施策をして、民間に売上をつくらねばならない。

 

観光立国ニッポンの姿

徳島新聞を電通。徳島市を日本国政府と各省庁として置き換えたら、観光立国の姿が見えてこないだろうか。少子高齢化により、製造業での収益を見込むよりも、自然や建築物の観光資源を活かし、外貨を獲得し、収益をあげていく。その収益は宣伝費という名目で電通に流れる。税金として各省へ配分される。利益の恩恵を受ける団体はその政党を指示し、国ができあがる。

民衆はどこへ行く

そして、民衆はどこへ行くのだろうか?

その発露が「踊る阿呆に見る阿呆」という阿波踊りで、踊り手が「総踊り」をしたい、という行動に繋がったのだ。ひとりの理事長の声で、1000名を動かせるものではない。彼らひとりひとりの気持ちに、理事長が背水の陣で動いた。

あの「総踊り」は、民衆の手に「祭り」を取り戻した「一瞬」だったのである。そして、日本は民衆の手に「祭り」を取り戻すことができるのであろうか。私は、2011年の原発の問題のとき、一瞬だけ取り戻したように思う。

 

デモクラシーは、民衆解放ではない。権力闘争である。そういうドラマが「阿波踊り」の一件には内包している。だから、胸が熱くなり、応援する人がいる一方、民衆の行動に恐怖するものは、否定的に捉えていく。仮に、中国企業が10億円で、阿波踊りの事業を買い取る、ということになったら、彼らは無益争いをやめて、手をとりあい、発展へむけて歩いていけるのだろうか。そう望みたい。 

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